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第131回「その人だけの髪」藤島 大

  コーンロウ。編み上げのヘアスタイルのひとつである。日本代表の共同主将、堀江翔太のそれが「品位を欠く」として、日本協会が「髪型や服装のガイドラインを設ける検討を始める」と報じられた。本稿筆者も新聞社の社会部記者から電話取材を受けて以下のように答えた。

「代表選手には『位高き者務め多し』の精神は必要だ。しかし髪型はそこに含まれない」

  もう少し説明したい。前提として、国際統括機関、ワールドラグビーの憲章のひとつに「品位」は掲げられている。ただし、それは「姿かたち」を対象とはしない。フェアプレー、友情の尊重、といった心構えにとどまる。日本協会がもし「姿かたち」を独自の解釈で含めるとしたらずいぶん大胆な方針ということになる。国際的には相当な説明を要するだろう。

  なぜ、堀江翔太のヘアスタイルは問われるべきでないのか。日本代表だからだ。ジャパンは日本列島でラグビーを好むすべての人間の代表である。だからこそ多様な価値を認めなくてはならない。ある人は「黒髪で短髪でないと品位がない」と考える。別の人は「髪型は自由であるべきだ」と思う。その場合は後者が優先される。なぜなら「自由」だからだ。なにも「コーンロウにするべきだ」と主張しているわけではない。全ラグビー人のなかで嗜好が対立するなら「個人にゆだねる」ほかはない。

  高校や大学のラグビー部が「部員は髪を染めるべからず」と決めるのは許容される。プライベートなチームだからだ。筆者も、早稲田大学コーチ時代には「茶髪にしない」という部の方針を支持した。特定のクラブのある年度の監督や主将が方針を掲げるのはまさに自由なのである。もし「そんな規則は自主独立を標榜する本学のクラブにふさわしくない」という意見の部員が頼もしくも出現すれば、その場で、議論すればよい。

  ある会社のある営業部が「仕事では白のシャツとネクタイと黒靴を」と定める。これも自由だ。「いまの時代、水色のシャツに茶の靴もフォーマルだ」と異を唱える若手社員が出現したら上司ととことん話し合う。それは社会生活の一部である。しかし何万人規模の会社が全体として強制すると、少し、こわい。ここは部や課の単位にとどめるべきだ。まして、もっと大きな力、それこそ政府が「国民ひとりひとりの姿かたち」に言及すれば暗黒社会の到来である。「いくらなんでも、そんなことまで」と感じるだろうが、過去にも現在にもそんな国ならある。こわばった権力の嗜好は実質の強制に近づく。

  高校野球の「丸刈り」も、形式的には、連盟の規定、すなわち強制ではない。しかし現実には同調圧力が全国の指導者と球児を覆っている。おかげで「髪型を自分で選びたい」少年がずいぶん高校入学後にラグビーに転じて、あれはありがたかった。

  繰り返す。日本代表は日本列島のすべてのラグビー人の価値を引き受けなくてはならない。「公」だからこそ寛容でなくてはならない。レフェリーを敬う。これは共通だろう。「レフェリーなんて敬うべきでなし」という価値観は仮にかすかに存在しても無視してよい。でも選手のヘアスタイルの評価を協会の誰かが決めるのは無理だ。近い将来、サンウルブズのモップ頭のヴィリー・ブリッツが、ジャパンに呼ばれることにでもなり「ライオンのたてがみのようなヘアスタイルは品位に欠ける」と協会が断髪を命じたり、短髪を代表入りの条件としたら、海外メディアがただちに伝え、担当者は、相当に練った弁解のコメントを発しなくてはならない。「ヴィリーのヘアを守れ」キャンペーンはSNSで全世界に拡散するだろう。

  高校などの現場の指導者が、経験において「おとなしいヘアスタイルの子のほうが頑張る」と実感しているとすれば「自分のチーム」をそう導けばよい。「姿かたちとラグビーの関連」について部員の意見に耳を傾け、監督・コーチとして、なお説得していく。こうしたやりとりは真剣勝負のスポーツならではの知的行動のひとつである。しかし、競技の統括団体のような大きな単位で「姿かたち」に言及するのは、ひとりずつの選手や指導者の思考の深みを阻んでしまう。スポーツの自由を損ねる。あってはならない。

  最後に。堀江翔太は大阪の公立中学時代、バスケットボール部員だった。当時の男子はシューズの内側にソックスを折り込んで隠した。流行だったのだ。だが、堀江少年は旧式のハイソックスで通した。「頼むから靴下隠してくれ。かっこ悪いから」。まわりが頼んで変わらない。「俺には自分のスタイルがある。好きにさせてくれ」。当時のチーム仲間に聞いた実話である。

■筆者「藤島大」の略歴■スポーツライター。1961年、東京生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。曼荼羅クラブでもプレー。ポジションはFB。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。著書に『ラグビー特別便』(スキージャーナル)、『ラグビーの世紀』(洋泉社)、『知と熱』『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『スポーツ発熱地図』(ポプラ社)、『ラグビー大魂』(ベースボール・マガジン)、『キャンパスの匂い』(論創社)など。東京新聞(中日新聞)火曜夕刊にコラム連載中。
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