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第123回「悔いて恨まず」藤島 大

  心安らかに悔いる。この季節、卒業を控えたシーズン、これまでのチームを離れ、新たな場所へ向かうラグビー選手にそうあってほしい。どうか悔いてください。ただし心の奥の奥のまた奥は安らかなまま。

  旗を握る者などわずかだ。優勝チームは普通はひとつ。国内男子なら、パナソニックワイルドナイツ、帝京大学、仙台高等専門学校、東海大学付属仰星高校、2015年度、高校の学齢以上の各カテゴリーのトップにおけるトップはそれですべてである。あとのチームの者は悔いた。いまも悔いる。

  スポーツは勝負だ。闘争的スポーツの醍醐味は勝ち負けへの執着にある。以下、ずっと書き続けるほかないのだが、スポーツをめぐる不祥事のたびに、識者を自認する人々が「勝利至上主義の弊害」を理由に挙げるのは間違いである。体罰、人間の尊厳を軽視する弱い者いじめのような行為は「勝利至上でない」から起きるのだ。よほど潤沢な戦力や環境のない限り、いやなことがあったら負ける。「いやなこと」は「つらいこと。厳しいこと」とは異なる。もっと根源で「いやなこと」である。同じ条件のライバルがひしめく場合、格上に挑む際、そこにいる人間の内面を尊重しなければ力を発揮できない。つまり勝てない。勝利至上と勝利至上もどきは違う。

  負けても次があるさ。社会で成長できればよい。これも間違いだ。敗れて、だから将来の糧とできるのは、負けたら明日はないと思いつめた者の権利なのだ。もちろん、すべての集団が日本一を目標と定められるわけはない。高校の部員が少なくて合同チームなら、その時点で花園優勝の道は閉ざされる。それでも「ここを突破」の高い目標を掲げる。歯学部のラグビー部なら医科歯科リーグの頂点をめざす。地域伝統の対抗戦にかける例も過去にはよくあった。いずれにせよ、まあそこそこの順位、結果でいいや、と当事者が思えば、その時点で闘争的スポーツの価値は半減してしまう。ここはトップリーグでも同じだ。

  負けたら悔いる。悔いるべきだ。でも心がささくれだって他者を恨んだり、ひがんだりしては人生が貧しくなる。では、こんなに悔しいのに誰かを恨まずにすむためにはどうすればよいのか。キーワードは「自分の意思」だろう。「意志」としてもよい。自分が選び、自分で考え、自分で試行錯誤をかさね、自分が敗北する。そうであるなら悔いは純粋な悔いとなりうる。

  学生ラグビーの入部拒否や強制退部に反対だ。理由はひとつ。悔いが濁るからだ。その学校のラグビー部にあこがれて、受験勉強に励んで入学、直後に体力テストなどでふるいにかけられて「右の者、入部を許可せず(事実上の退部だ)」と宣告された。すると、拒まれた者には「機械的にはじかれた」という恨みが残る。拒んだ側も入口のところで押し返したので心はさほど痛まない。

  ともに部活動を続ける過程で、あまりに体力がなかったり、練習を休みがち、という理由から指導者やキャプテンが「お前はやめたほうがいいのでは」と直言する(ここまでは認められると思う)。重圧はかかるが強制ではない。それで発奮する部員もいれば、あきらめる部員もいる。どちらにしても、いったんは生々しい時間をともに過ごしているから何らかの感情は通っている。門前払いとは別次元だ。

  同じ退部でも、正式に入部を認められ、日常の練習、赤裸々な人間の喜怒哀楽のさなかに、仮に「もうついていけない」と「自分の意思」で部を去ったとする。すると悔いは、歳月を経て安らかになるはずだ。「ああ俺の根性がなかった」と自分で自分を悔いて新しい自分をいつか迎えられる。冒頭の選手として敗北を悔いる場合も同じだろう。

  負けて学窓を飛び出す。悔いて、悔いて、また悔いる。次の世界でも、よほど幸運な天才でなければ、いつかどこかで悔いる。そのとき、そこに至る道に「あんなに自分でもがいた自分」が見つかりますよう。

■筆者「藤島大」の略歴■スポーツライター。1961年、東京生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。曼荼羅クラブでもプレー。ポジションはFB。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。著書に『ラグビー特別便』(スキージャーナル)、『ラグビーの世紀』(洋泉社)、『知と熱』『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『スポーツ発熱地図』(ポプラ社)、『ラグビー大魂』(ベースボール・マガジン)、『キャンパスの匂い』(論創社)など。東京新聞(中日新聞)火曜夕刊にコラム連載中。
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