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第124回「出たら飛べた」藤島 大

  サントリーの新キャプテンに23歳、入社2年目の流大が選ばれた。必要ないだろうが、おせっかいで氏名は「ながれ・ゆたか」と読む。若きリーダー抜擢のニュースに接して、愛読書の一節が思い浮かんだ。名文の落語評論家、京須偕充の『幇間は死なず』。ほうかん、よいしょで旦那を喜ばせる芸人、太鼓持ちのことですね。

  「小鳥ならば春は巣立ちのシーズン」。まず、そう書いて、でも「人間は『入』の字の季節」。つまり入社のシーズンということになっている。「出ていっても入るところがなけりゃ路頭に迷う」。そうそう簡単に広い空間へ出ていくわけにはいかない。そいつが「人間社会ってものの悲しさ」…。

  流大は自由な鳥だ。昨春、帝京大学から世界的な酒・飲料メーカーに籍を得た。普通なら立派な会社の立派なクラブに「入った」。ただし収まる感じはしない。高いところにある場所で、さらに羽ばたくイメージ。若きキャプテンには「巣」があった。巣を出られたから、もう巣には入らずにすみ新しい空間へと飛び出せる。

  熊本の荒尾高校、そして帝京大学ラグビー部での歳月は、世界レベルを視野にとらえるSHにとって、やはり成長進歩の根っこだったのだ。学生王者を峻厳にめざす過程で22歳の若者が「140人を超える部員をまとめる」。オーストラリアでもウェールズでもそんな経験はできない。帝京でリーダーシップを学び、発揮した時間は必ず有為であった。もとより人間の成長の道は単線ではない。たとえば米国映画には、幼児が親と離れて個室で寝るシーンがよくある。「より早く自立を」という社会の断面だ。日本では「自立より協同」が、「成熟より初々しさ」が優先される。というのは、あくまでも仮説だが、18歳のラグビー選手の平均的な精神年齢が彼我で異なる可能性はある。日本列島に生まれ育ったティーンエイジャーには、大学ラグビーのあり方が成熟の獲得にふさわしいかもしれない。

  ラグビー愛好者のかたに「大学ラグビーをどう思いますか」とたまに聞かれる。「捨てたものじゃないと考えます。なぜなら」。なぜなら、今回の流新主将もそうであるように、トップリーグの強豪にあって、しばしば、新人や入社数年の大学出身者が主力となる例を見てきたからだ。圧巻の連覇を続ける帝京でなく、もっと早い段階で敗退するクラブに青春を過ごした「きのうまでの学生さん」までが活躍する。プロ級の環境でトレーニングに励むと短期で追いつき、学校スポ―ツのくびきと縁のない海外の一流ともそれなりに伍す。

  もちろんユースから学校の活動を離れてトップクラブに参加するシステムがないから、大学ラグビーを経なかった者との比較はできない。ただ傍証にはなるし仮説も成り立つ。昨年のワールドカップのジャパンの躍進は「日本の大学ラグビーおよび海外の出身者」がなした。学校スポーツが「旧態かつ年長に従順な無思考」なだけなら各競技はもっと弱い。日本代表の偶像、リーチ マイケル(マイケル・リーチ)は、札幌山の手高校と東海大学でラグビーを学び、ラグビーに浸った。いわば部活動の子供だ。はたして「あのままニュージーランドで育ち、日本で学校スポーツなんかに時間をとられなきゃ、もっとよい選手になれた」と言い切れるだろうか。

  当然、リーチ マイケルや流大を育んだから学校スポーツがすべて正しい、とはならない。ふたりなら仮にプロのアカデミーが日本国内に存在して、そこへ飛び込んだら、きっと成功した。意欲と資質に富んだ個性なら部活動からでも国際的な選手になれるように。

  先日、広告代理店に勤める元大学ラグビー部員と会った。学生時代の逸話を教えてくれた。ひとりの先輩がいた。無名校から受験浪人を経て入学、体格に恵まれず、俊敏なわけでもなく、しかし集中力と理解力に優れ、フランカーとして強豪校のレギュラー目前まで到達、なお一歩およばなかった。後輩には花園出場経験があり比較すると体も大きかった。新人のころ、技術と心構えの多くを小柄なこの4年の先輩から盗んだ。その人は卒業に際して言葉を残した。「俺みたいな人間になるな。レギュラーになることだけを考えろ」。言われた当人は思った。「この人みたいな人間にならないとレギュラーにはなれない」と。能力で輪切りにする実利のシステムでは、こうした精神の交錯はなかなか実現しない。春。会社へ、組織へ「入った」元ラグビー部員たちよ。君たちは入ったけれど飛び出しもしたのだ。いまそこに力を尽くしながら、どうか自由に世界を渡ってください。

■筆者「藤島大」の略歴■スポーツライター。1961年、東京生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。曼荼羅クラブでもプレー。ポジションはFB。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。著書に『ラグビー特別便』(スキージャーナル)、『ラグビーの世紀』(洋泉社)、『知と熱』『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『スポーツ発熱地図』(ポプラ社)、『ラグビー大魂』(ベースボール・マガジン)、『キャンパスの匂い』(論創社)など。東京新聞(中日新聞)火曜夕刊にコラム連載中。
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