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第140回「鵜住居に秋田工業を見た」 藤島 大

  ジャパンがフィジーを制した。34ー21。しかも釜石鵜住居復興スタジアムで。これからも試合は続くが、代表は「ひとつの勝ち」に絶対の価値がある。終了後、当日に帰京できないこともなかったが、ここは釜石泊だろうと、さいわい一室だけ空いており予約のかなったホテルに残った。ラグビーを愛する者の人生の義務として、地元の酒場へ突進する。庶民の一軒だろう『二合半』。そのまま「にごうはん」と呼ぶのか、昔ながらの「こなから」と読むべきか。尋ねるのを忘れた。後者は「半分の半分」の意味で、すなわち「一升の半分の半分=二合半」。浴びるほど飲むな。それくらいにしておけ。そんな優しさを表しているのかもしれない。異議なし。途中、戸が開き、新日鐵釜石の往時の名ハーフ、坂下功正さんが満席の店内をのぞき、そっと去っていた気がしたのだが、あの土地には楕円球の妖精がよく出没するので幻かもしれなかった。

  店へ向かう途中、フィジー系と思われる数人の男女が国旗の空色をまとい歩いていた。東北、釜石、夕陽も落ちる大町あたり、こちらも幻想を見るようだ。いい光景である。翌朝。ストリートを行き交うファンの人たちの表情が喜びの余韻をたたえている。この一点でジャパンは勝つべきだ。

  実は本稿筆者は、桜のジャージィの白星にあって、黒星を喫していた。放送の解説、最後の最後の場面、フィジーの自陣深くのスクラム起点、FW3列の長いゲインをジャパンのタッチラインぎわの好タックルがしのいだ。解説席では、途中から投入された気鋭の左プロップ、三浦昌悟の一撃に見えた。つい口にした。本当は、背番号12の中村亮土だった。両選手、視聴者に申し訳ない。もちろん、三浦がフロントローとして押し合って、そこから突破されて、まさか追いつくだろうか、とは思った。それなのに「ありうる」と迷いを押し戻した。ここのところの意識の流れを分解したい。

  ジャパンのフィットネスは際立っていた。猛暑と書きたくなるコンディション。日差しのきつさは体感温度をさらに高めただろう。なのに走れた。というより動作のひとつずつに「キレ」があった。ここははっきりと宮崎キャンプでの猛練習の成果だ。本日であればスクラムを解いた17番も反転、猛ダッシュで、ひとりふたりにからまれて少々の時間の費やしたランナーに届く。そう思い込んだ。もちろん背番号の類似で間違ったのが先なのだが、ありうると脳の指令が下った。

  この13日前、堅牢なスクラムを組んでみせた24歳、東海大学−トヨタ自動車ヴェルブリッツの三浦昌悟の母校、秋田工業高校のグラウンドで、伝統の練習を目撃した。きれいな人工芝、試合ぶりはモダン、それでも、ことスクラムは、熱心なコーチがしつこく、しつこく仕込んでいた。競技ルールも指導者も変わっても、やはり昔ながらのひたむきな「秋工」だ。そこでまた秋田工業出身の三浦なら、押して、ただちに戻る意思、脚力、丈夫な肺を備えている。そう思い込んだ。

  さらに、筆者の若き日、大学の教室でのラグビー部ティーチング、当時の大西鐵之祐監督の教えというのか情熱の叫びがよみがえった。部員に質問しながら進めるのだが、ある日、こう問うのだった。「敵陣の中盤、スクラム。展開。いちばんトライをとれるのはどこのポジションや」。部員の回答は忘れた。「接近 連続 展開」の人は言い切った。
「プロップや」
  いわく「スクラム、パーンと組んで、さっとブレークして、サインプレーの成功を予測して一直線に走る。ほかのポジションのような義務はない。そのまま自分の感覚で走って構わない。ゴール前、ウイングからカーンとボールもらってトライやないか」。以後、フロントローが素早くスクラムを解いてチャンスやピンチの場面に顔を出す瞬間に関心が高まり、事実、そういう例はよくあったし、いまもある。

  なんて言い訳に行数を割けるのも、ジャパン勝利のおかげである。これまで、正直、頼りなく映ったロック、ジェームス・ムーアのラックでの献身とオールアウト(出し切り)、中村亮土の防御の意識の高さ、ウィリアム・トゥポウのトライ阻止タックル、松島幸太朗の冷静と鋭敏の両立などなど、すべての勇士に二合半までの乾杯を。

■筆者「藤島大」の略歴■スポーツライター。1961年、東京生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。曼荼羅クラブでもプレー。ポジションはFB。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。著書に『ラグビー特別便』(スキージャーナル)、『ラグビーの世紀』(洋泉社)、『知と熱』『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『スポーツ発熱地図』(ポプラ社)、『ラグビー大魂』(ベースボール・マガジン)、『キャンパスの匂い』(論創社)など。東京新聞(中日新聞)火曜夕刊にコラム連載中。
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