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第142回「ワンチームの森は深い」 藤島 大

  ラグビー好きにとって、きっと忘れるのは難しい年、その最後に、ふと次のように思う。

  「ワンチーム」を「流行語」にしてはならない。

  もちろん、ジャパンの体現した「ワンチーム」の格別な価値が、広く、ラグビーのサークルの外の人々にも伝わり、これからも伝わりそうな現実は本心ではうれしい。ただ「取り扱い注意」の文句だとも考えてしまうのだ。

  以下、想像。とある職場で、若手社員がやや緩慢な動きでミスをしたとする。商談はまとまらなかった。上司が呼びつける。「おい。われわれはワンチームだろう」。どこか違う。ワンチームは、そんな次元にはない。

  ワンチームとは「一色に染まる」という意味ではない。むしろ反対だ。チーム、ある目標に向けて編成された小集団を形成するのは「ひとりずつ」である。先のワールドカップのジャパンは日本に生まれ育った選手と6カ国におよぶ海外出身者がチームを形成した。違いを認め合い、ひとつの目標(ベスト8進出)を掲げ、ひとつ(および、その裏でもうひとつ)の戦法を練り、鍛錬で身体化、ひとりずつの選手が自分らしく遂行してみせた。

  監督やコーチは、みずからの率いるチームに選ばれた、あるいは集まった選手のキャラクターを深く知り、いかして「ひとつの戦法」に欠かせぬ存在となるように導かなくてはならない。ここは多国籍かどうかにかかわらない。国内の草の根チーム、学校のクラブも同じだ。

  おのおのの部員の性格を観察、それをわかったうえで、ターゲット(たとえば××高校に勝って花園出場)を定め、成し遂げるための仮説として戦法を構築、練習試合を通して実験、検証、再構築を重ねながら、戦い方に求められるスキルや体力を導き出し、時間との戦いに押されぬように、ひとつずつ段階を積み上げる。

  個があって、全体があって、個にかえる。これは元日本代表監督の大西鐵之祐さんのチームづくりを本コラム筆者がかつて言葉にしたものだが、時代を超えて、有効な流れだと信じる。「ワンチーム」も無縁ではあるまい。この場合の「かえる」は、元に戻るという意味で「返る」であり、出発点へ戻るという解釈では「帰る」のイメージもなくはない。個−全体−個のサイクル。いずれにせよ最初と最後は「ひとりずつ」だ。

  みんな違う。それを認めるには指導者の個への関心が前提となる。指導者はひとりと向き合い、ときに衝突も辞さず、やがて信頼を通わせる。その集合体だけが「ワンチーム」となりうる。「これが私の方針だ。気にいらないなら去れ」では「ただのひとつのチーム」しかできない。

  ひとつのチームに、トンガ生まれ、ニュージーランドに生まれたり幼少より育ったりしたヨーロッパ系やサモア系やフィジー系、中学から日本で暮らす韓国出身者、第一言語は英語でなくアフリカーンス(オランダ語に近い)の南アフリカ人、日本列島で誕生した者などなどが集まったとする。大切なのは「ひとりずつ」が「自分らしくあること」だ。スポーツの範疇で「自分を変える=ラグビーに取り組む姿勢を見つめ直す」取り組みは求められる。あたりまえだ。しかし、日本代表だから、みんな日本らしく変われ、クロアチア代表だとしたら、さぁクロアチア的に生きよ、と、強いれば、それは、ただのひとつのチームであって、ワンチームとはなりえない。

  当然、個を放置したままではチームは成り立たない。オールブラックスに選ばれたら、たぶん最初のミーティングや練習のいちばん最初から「オールブラックスという文化」に包まれるだろう。××高校に入ると、××大学に進むと、いきなり「私たちはこう生きてきた」という目には見えない先人たちの信念にくるまれる。それが一流のクラブだ。トップリーグもしかり。カルチャーを培ったところのみが結果を残す。

  そして、その文化は「ひとり」を否定しないので何年も何年も続いてきた。ひとりずつの違いにびくともしないくらい大きく確たるものがあれば、ひとつずつの個性もそこに躍動する。ぐらつかぬ大枠があって自分らしく生きられる。異なる背景や価値観を理解し合う時間は、グラウンド内外のコミニュケーションのレベルを深くし、高める。あのジャパンである。

  ワンチームはとても簡単にはできない。流行語には収まらない。高い目標を設定する。深いカルチャーを醸成する。監督とコーチは、ひとりに愛情を注ぎ、勝ったり負けたりしながら、ひとつの目標へと近づく。寛容だから強靭。実現には、そこにいる人間の努力と教養、さらには歳月を要する。社会と同じだ。

■筆者「藤島大」の略歴■スポーツライター。1961年、東京生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。曼荼羅クラブでもプレー。ポジションはFB。都立国立高校、早稲田大学でコーチも務めた。スポーツニッポン新聞社を経て、92年に独立。第1回からラグビーのW杯をすべて取材。著書に『ラグビー特別便』(スキージャーナル)、『ラグビーの世紀』(洋泉社)、『知と熱』『熱狂のアルカディア』(文藝春秋)、『スポーツ発熱地図』(ポプラ社)、『ラグビー大魂』(ベースボール・マガジン)、『キャンパスの匂い』(論創社)など。東京新聞(中日新聞)火曜夕刊にコラム連載中。
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